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体育大学生、インターンからクリエイターを目指す(その4)
04 元体育大学生、クリエイターになる
一 マーケティングは片桐さんがやりたい仕事でしたね。声がかかった理由は何だったのですか?
pringの社長からは「片桐さんは、なんでもやるからいいよね」という言葉をいただきました。
マーケティングチームの仕事は元々やりたい仕事でした。
でも、「その仕事をやりたいです」と言ったところで学生の自分に担当させてくれるわけがありません。なんでもやった結果、その中で自分が価値を出せそうなことが仕事として与えられるのだと思いました。
一 ただ、その会社はお客様の会社ですよね。ニンニンドットコムの正社員にはなれたのですか?
3月も終わりに近づき、インターンは無事終了しました。
晴れてニンニンドットコムへの正式な入社が確定したのですが、実は日々の仕事に必死なあまり、正直、自分がアルバイトなのか正社員なのかどうでも良くなっていました。
正社員雇用されていることを知ったのは、最初の給与明細が渡されたときでした。
一 必死な毎日だったんですね。正直、途中で辞めたいと思いませんでしたか?
辛いことは多かったですが、辞めたいと思ったことは一度もありません。
ここで諦めてしまえばもう入社できないと分かっていましたし、「そこまで厳しく言わなくても・・」とか「そこまで考える必要はあるのか?」と納得できないこともありましたが、実行に移してみると想像以上に、社外で褒められることも多かったので、知らないうちに成長しているんだなと思うことは多かったです。
一 社外では、どんなふうに褒められたのですか?
例えば「思っていないことは無理に話さなくていい」という助言。
会議に出るからには何か発言しなければと意気込んでいましたが、中身のないコメントを言うくらいなら、しゃべりすぎないくらいがちょうどいいと言われました。実際、お客様の会議では、とにかく喋らなければと、薄い内容を言うメンバーはどんどん外されていきました。
「ご飯に誘われたらもりもり食べろ」というアドバイスも、実行すると褒められることが多かったです。
ラグビー元日本代表のお客様との食事の場では、それだけで将来性があると言われたこともありましたし、広報の勉強で通っていた「山見塾」で出会った社長にも「片桐さんの食べっぷりを、朝礼で自社の社員に推奨した」とも言われました。
よく食べる人は、それだけ仕事ができるように見えるのだといいます。仕事と食べることがそれほど関係するとは思いませんでした。
一 辛いだけではなく、身になっていた部分も大きかったんですね
はい、辛いからと投げだしたら、その先に待っていた喜びにも一生出会えなかったとも思います。
一 その先に待っていた喜びとはなんですか?
インターンの時にマーケティングチームとして一緒に仕事をしていた社長から、ストックオプションの話を受けました。
ストックオプションとは「将来の株を買う権利」と説明されましたが、社会人になりたての私にはピンときませんでした。
同意する場合、必要な金額は3万円。当時の手取りから考えても、決して安い金額ではありませんでしたが、判断に迷ってニンニン社長に相談したところ「万が一失ったとしても、たった3万円。けれど得られるメリットは天井がない。話のネタとしても俺なら出しておく」という返事が返ってきました。
加えて「株を渡すということは会社にとって血を分けるようなこと。嬉しいことでしょ。」とも言われました。
一 社外のメンバーなのにストックオプションを得られたんですね
思い切って購入すると、確かに「自分はこの会社の身内だ」と感じるようになり、その会社をより身近に思えるようにもなりました。
しかも、新卒入社から3年目を迎えた2021年7月、この会社がアメリカの巨大IT企業に100億円超で買収されたというニュースが飛び込んできたのです。
私の支払った3万円は、100倍以上になって返ってくると言われました。
一 実際にそのお金は入ってきたんですか?
はい、入ってきました。
普段から経営者と関わる仕事をしていたので、お金の動きに興味を持ってはいましたが、これをきっかけに株や株式上場、M&Aなど、会社の仕組みについても学ぶようになりました。
一 苦労したかいがありましたね。
仕事は厳しく叱られるし、辛いことも多いです。
ましてや私がやっていたインターンは、どんなに辛い思いをしながら徹夜で動画を編集しても、当時は1日5,000円です。正直割に合わないと思ったこともあります。
でも、本当の学びはこういったところにあったと思います。まだ一人前に仕事ができない学生に、仕事という形で勉強の機会を与えてくれたこと、その上でお金も出してくれていたこと。それを理解できた今はありがたいと感じます。
一 学校とは違った学びを得られたということですね。
学校の授業では、仕事で感じるようなプレッシャーは味わったことがありませんでした。就職を前提とした授業でも、形式的な演技のようで、社会人になる勉強として本当に意味があるのかと疑問に思ったりもしました。
でもそれは、学校にとって学生はお金を払うお客様で、学校はサービスを提供する側だったからだと思います。お客様である学生が気分よく手ごたえを感じられるような授業を意識的に提供していた部分もあると思います。
一 これからクリエイターを目指す人に何か伝えたいことはありますか?
学生の頃は、仕事で会社に行くことと、授業に出席することは同列のように思っていました。どちらも面倒なことを我慢するという点で同じだと思っていたのです。
しかし、仕事と学校は全くの別物です。
お金というものは、自分が味わった負担に対して払われるものではありません。作業時間や苦痛の代わりにお金を受け取っているわけではないのです。
モノやサービスをやり取りする際の金銭は「代金」と呼ばれます。つまりお金の本質とは、価値との交換です。
自分の提供できる価値を、誰かにお金と交換したいと思わせること。
これが仕事の本質です。自分の価値を高めれば高めるほど、自分が受け取れるお金は増えていきます。
インターンから今日に至るまで働いてきた私が、学生時代と明確に変わったと感じられるのは、自分や自分の仕事を「お金と価値の交換」という視点で捉えられるようになったことです。
学生の皆さんにも是非一度、価値とお金の関係や仕事の本質について考え、自分の価値観を見つめなおす機会を持っていただけたらと思います。
終わり