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日本の若者がシリコンバレーで見たものは?(その4)

日本の若者がシリコンバレーで見たものは?(その4)


前回より続く

04 自分だけが信じる「真実」を発見せよ

一 スタンフォード大学の教授にまで教わって、どうしてやめちゃったの?

僕がやるべきじゃないと思ったんです。
睡眠学って本当に奥が深くて、重要なテーマなんですけど、この事業をやるには、睡眠医学の領域でめちゃくちゃナレッジを持ってるか経験のある人か、または新しいテクノロジーに強みのあるエキスパートかのどれかが必要だと思って。
僕はそのどれでもない。
改めて、自分にしかつくれないサービスで、これからの人類が必要とするサービスって何だろうと考えはじめました。
色々考えているところで、新型コロナウイルスが発生しました。同時に、世界中で普段離れて暮らしている「家族」や「愛する人」に会えない人が増えていったんです。
実は、僕、これまで国際遠距離恋愛しかしたことがなくて。距離や時差によるコミュニケーションの問題はずっと抱えていました。
誰にも理解されませんが、国際遠距離恋愛がめちゃくちゃ好きなんです。一生続けたいと思うくらい。
これは、いわゆる「自分だけが信じる真実だ」って気づいたんです。

一 自分だけが信じる真実とは?

シリコンバレーでよく言われるのが、「世界中はAだと思ってるけど、自分はその真逆のBだと思っているような、自分だけが信じてることを事業にすることが、世界にインパクトを起こす“自分がやるべき事業”だ」ということなんです。
これは、PayPalをつくったピーター・ティール氏がずっと提唱していて。
最初は、「それって何だ?」って思っていましたが、僕にとっては「国際遠距離恋愛が世界で一番最高な関係である」ということだと気づいたんです。
僕の家族は、みんな違う国に住んでいますし、僕がこれまで付き合ってきた人は全員、僕とは違う国に住んでいました。
僕はこの関係が大好きだし、これからはこうした関係がデフォルトになるとさえ思っています。
僕は、こうした関係がもっと円滑に進むコミュニケーションツールをつくるべきだと。

一 つまり、自分だけが信じる「真実」とは、国際遠距離恋愛でのコミュニケーションには解決するべき問題があると

早速、サービスの構想を発信したらどんどん共感が集まって、色んな人が可能性を広げてくれてくれました。
ただ、僕自身は技術者ではないので、技術に長けたパートナーが必要でした。
そして、日本でクラウドファンディングが成功した時、シリコンバレーで成功している日本人起業家のひとりから連絡がきて「助けてやる」と。
それで、生まれたサービスが国際遠距離カップル向け通話アプリ「Here」です。
いろいろアドバイスを聞いて、順調にいってきた時に「日本に帰ってとりあえず5,000万円ほど調達して戻ってこい」と。
それで、今、日本に帰ってきています。

一 すごい勢いで事業が進んだんですね。
事業化に至るにはどんな点がポイントだったんですか?

自分や自分の周りですごく困っていることは何だろうと考えたことです。
今、世界中で入国規制をしていますよね。僕自身、彼女にずっと会えていませんでした。
僕はシリコンバレーで事業を探していて、彼女は日本で暮らしている。
そもそも、遠距離カップルはコミュニケーションがうまく取れないものですが、それでも数ヶ月に1回は会ったりできるじゃないですか。
でも、今はそれもできない。
おまけに、時差があるから全然タイミングが合わないんです。
なかなかタイミングが合わないなかで、この日のこの時間に話そうと頑張るんですけど、ちょっとしか話せない。
そんな時、スマホ越しで、初めて彼女を泣かせてしまいました。
「ぜんぜん連絡取れないし、もっと話したい」と彼女が言うので、「じゃあこの日のこの時間に話そう」って言うと、それも「嫌だ」と。
「そんな業務的に決められた時しか話せないのは嫌だ」って。

一 刑務所で家族と面会するみたいだもんね(笑)。
ふとした瞬間に声を聞きたいっていうのが恋する男女ですから

その時に、気づいたんですよ。
僕は、この関係をこれからも一生涯続けていきたいけど、これまでもずっとこの時差のある通話には課題がある。
通話って相手のタイミングや都合が分からず一方的にはじめるコミュニケーションです。
通話できるかどうかじゃなくて、タイミングを合わせられないっていうことが問題なのに、なんで解決されていないんだろうって。
世の中で国際遠距離恋愛をする人はまだ少数だけど、これからこうした関係が多くなって、今の通話機能をこのまま使い続けていたら、たくさんの人が同じ思いをしてしまうと。
これは、つくらなきゃいけないと思いました。

一 LINEとかで、どこにいてもコミュニケーションできる時代だと思ってたけど
時差の問題は別なんですね。どうやって解決するんですか?

まずは、コミュニケーションツールとしてどんなサービスがあるかを探しました。
そこで、アメリカで2年ほど前に生まれた「TTYL」というサービスに行き着きました。
これは、7人限定の友達グループにしぼった通話アプリなんですが、その仕組みの根幹をなすのが「同時接続」という機能です。
この機能が、時差の問題を解決するのでは?と考えました。
それで、同時接続の分野で起業している友人に「一緒にやろう」と誘い続けました。
クラウドファンディングで成功したときに「助けてやる」と言ってくれた彼です。
彼はその時、自身の会社のCEOだったんですけど、その会社を辞めて一緒にやってくれることになりました。

続く

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